パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病の大脳基底核と視床のコントロールを良くするための運動方法の考え方

 

はじめに

今回はパーキンソン病の主な運動障害であるパーキンソニズムを上手にコントロールして、なるべく長く身体運動機能を良い状態に保つための運動方法について解説したいと思います。

今回の解説を読まれる前に「大脳基底核と視床のはなし」を読んで大脳基底核と視床の機能について学んでおいてくださいね。 よろしくお願い申し上げます。

 

 

パーキンソニズムとは?

パーキンソン病はレビー小体という物質が大脳基底核などに蓄積することで、脳神経が障害され、そのために黒質でのドーパミン産生が阻害され、大脳皮質~大脳基底核~視床~大脳皮質への閉鎖回路の神経伝達が障害されて、まずは振戦や動作の巧緻性低下などの運動障害が出現します。

そして時間の経過とともに姿勢反射障害などが起こり、スクミ足や身体の傾き(側弯や円背)などが起きてきます。

これらの運動障害はパーキンソニズムと呼ばれています。

 

視床と大脳基底核での運動コントロール!

内包と被殻と視床 L1

これらの運動障害の一番の原因としては、視床での感覚情報と運動情報や空間識の統合による運動パターン候補の構築と大脳基底核での視床で構築された運動パターン候補のなかで最適なものを選択してアクセルとブレーキで運動を制御する機能が障害されることで、スムースな運動の切り替えが出来ずに、スクミ足になったり、強張ったりしてしまうと考えられています。

ですからこの視床での運動パターンの生成と大脳基底核での選択をきちんと行うように練習することで、適切な運動をスムースに行えるような手助けとなるリハビリテーションが考えられます。

もちろんこの視床と大脳基底核を含む大脳皮質との閉鎖回路をキチンと動かすにはドーパミンの補充は必須ですが、進行するパーキンソン病の症状に合わせて、視床での感覚と運動の統合と大脳基底核での運動切り替えの習熟練習を行うことで、より長い期間より良い運動機能の維持が可能となる可能性が残されていると考えられます。

 

 

大脳皮質~大脳基底核~視床~大脳皮質の閉鎖回路を障害する要素!

  1. 黒質でのドーパミン産生の減少による、この閉鎖回路での神経伝達の障害

  2. 身体の筋肉の強張りや姿勢の変化による運動感覚の変化

  3. 身体機能の変化によりかつての運動が慣れて習熟した動作でなくなってしまっている

  4. ウェアリングオフによる日内変動でさらに動作のコントロールが複雑になっている

これらの問題点から、視床での運動パターン候補の生成と大脳基底核での最適な運動パターンの選択をスムースに行うようにするために、リハビリテーションを行います。

現状の身体状態における最適かつ基本的な運動パターンをあらかじめ選択しておき、それをパーキンソン病でのパーキンソニズムの障害のある条件下で習熟トレーニングを行うこと。

またそれらの運動パターンを視覚情報の変化に伴い切り替える練習を行うことで、パーキンソン病によるスクミ足的な障害を極力減らすアプローチが有効と考えられます。

そしてそれらの運動パターンを習熟させることで、姿勢反射や運動の発現において、可能な限り良好な状態を作り出していきます。

 

 

パーキンソニズムによる運動障害に対するリハビリテーション!

  1. 普遍的で必要かつ最適と思われる運動パターンを、現状の身体状況下で繰り返し練習して習熟させます

  2. これらの幾つかの運動パターンをスムースに切り替える練習を繰り返し行い、運動切り替えの熟練を図ります

  3. これらの動作の繰り返しを行うことで、大脳基底核~視床でのチャンネルを良好な状態に維持する試みを行います

つまりパーキンソン病の有効なリハビリテーションの方法として、筋肉の強張り(ジストニア)や不随意運動(ジスキネジア)により強張ってコンディションが低下した身体状態の元で、繰り返しの基本的な運動パターンと、それらの運動パターンの切り替え練習を行うことで、新たに現状での最適な運動パターンの習熟を行い、可能な限り良好な運動機能を維持する試みを行っていきたいと考えています。

 

 

次回の解説からは、実際の在宅でのパーキンソン病の自主トレリハビリテーション方法の解説を行っていきます。

先ずはジストニアなどによる筋緊張の悪循環スパイラルを改善するための全身の筋肉や関節のコンディショニング方法について解説を行い、次いで大脳基底核~視床における運動コントロールを改善するためのリハビリテーション方法の解説を行っていきます。

よろしくお願い申し上げます。

 

 

次回は
「パーキンソン病における頸部の筋肉と関節のコンディショニング」
についてご説明します。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

関連ページ

序章: その運動機能の低下は本当にパーキンソン病の進行ですか?
1. パーキンソン病のリハビリテーション はじめに
2. パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい
3. 大脳基底核と視床のはなし

4. パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション
5. パーキンソン病の大脳基底核と視床のコントロールを良くするための運動方法の考え方

 

 

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