はじめに
今回は手足のファシリテーション(神経促通手技)を効果的に進めるために、座ったり立っていたりする時に、手を動かした時あるいは歩き出した時に、身体の軸がフラつかないで安定して運動を支えることが出来る身体の軸を作るための運動をご紹介します。
手足の運動機能を高めて神経足痛を成功させるには体の軸をしっかりさせましょう
まずはこんな状況を想像してみてください。 椅子に座っていて、少し離れたテーブルの上にある新聞を取ろうとした時に、あなたは座ったままでスムースに健側の手を新聞に伸ばすことが出来ますか? その時に肩や腕や腰にへんな力みは無いですか?
座っていて手を遠くに伸ばすと、身体の軸がそのままではバランスを崩してしまいます。 ですから転ばない様に背骨を弓なりに反らせてバランスを取ろうとします。 この時に背骨の左右の筋肉が協調して動くことが出来ないとスムースにバランスが取れません。 しかし脳卒中片麻痺では、背骨の両側の筋肉も片側には麻痺があるのです。 そして背骨の動きに連携する肩甲骨や骨盤を動かす筋肉も片側には麻痺があります。
ですからこの背骨の両側の筋肉と肩甲骨と骨盤を支えて動かす筋肉が左右で連携してスムースに動ける様な練習を繰り返し行って、上手に背骨と骨盤と肩甲骨でバランス運動ができる様に頑張っていきたいのです。
この時にもっとも注意しなければならないのは、この運動をリラックスして力まないで行うということです。 そしてさらにはリズミカルに行うことも大切になります。 リズミカルに拍子を取りながら「イッチにイッチに」と行えるということは筋肉が上手に動かせる様になっているということです。
筋肉の性能の指標は筋力だけではありません。 筋力の他に、筋持久力、筋瞬発力、筋巧緻性があります。 特にバランスに大切なのは筋瞬発力と筋巧緻性です。 筋巧緻性というのは、上手に筋肉を動かして細かい調節がタイミングよく行えるということです。 スポーツでも武道でも、ただ力だけではなく技が大切ですよね。
つまりは脳卒中片麻痺のバランスも力だけでなく技を磨く必要があるということです。
それではバランスの技を磨く運動を以下にご紹介いたします。
身体の安定した軸を作るリハビリ方法
座っていてリズミカルに左右のバランス運動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 椅子 (肘掛のない安定した硬めの椅子)
運動時間
5~10分
運動内容
① 安定した椅子に浅く座って両足を肩幅よりわずかに広めに開いて左右の足が前後にずれないように前後方向を揃えて座ります。
② ついで麻痺側の腕を健側の腕に乗せるように腕を組んで、健側の手で麻痺側の肘をつかんで支えます。
(麻痺側の肘を健側の手で包むように持ち、健側の腕で麻痺側の腕の下から支える様に持ちます)
③ そのまま胸の前で組んだ腕を左右にリズミカルに揺らせるようにして、左右のお尻に体重移動を行います。 この時に頭は常に垂直になるようにします。 さらに肩甲骨はできるだけ左右が同じ高さになるように気をつけます。
(健側へ体重移動 健側の骨盤に体重を移し組んだ腕を健側に振ります 背骨は反対方向に戻すように反らせます)
(麻痺側へ体重移動 麻痺側の骨盤に体重を移し組んだ腕を麻痺側に振ります 背骨は反対方向に戻すように反らせます)
(また健側に体重を移動します)
この運動をバランスに注意しながら、リズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
座っていてリズミカルに前後のバランス運動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 椅子 (肘掛のない安定した硬めの椅子)
運動時間
5~10分
運動内容
① 安定した椅子に浅く座って両足を肩幅よりわずかに広めに開いて左右の足が前後にずれないように前後方向を揃えて座ります。
② ついで麻痺側の腕を健側の腕に乗せるように腕を組んで、健側の手で麻痺側の肘をつかんで支えます。
(麻痺側の肘を健側の手で包むように持ち、健側の腕で麻痺側の腕の下から支える様に持ちます)
③ 組んだ腕を胸の高さに持ち上げます。
(組んだ腕を胸の高さに持ち上げます。 左右の肩と肘がなるべく同じ高さになる様に注意します)
④ そのまま胸の前で組んだ腕を前後にリズミカルに揺らせるようにして、前後に体重移動を行います。 この時に頭は常に垂直になるようにします。 さらに肩甲骨はできるだけ左右が同じ高さになるように気をつけます。
(開始姿勢)
(組んだ腕を前に突き出します、この時に背骨を反らせてバランスをとります)
(組んだ腕を後ろに引いて、体重を後ろに移します、この時に背骨は猫のように丸めます)
(ふたたび組んだ腕を前に突き出します)
この運動をリズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
立っていてリズミカルに左右のバランス運動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 手すり
運動時間
5~10分
運動内容
① まず手すりにつかまって立ちます。 この時に手すりより半歩後ろに立ちます。
② ついで麻痺側の腕を健側の腕に乗せるように腕を組んで、健側の手で麻痺側の肘をつかんで支えます。足は肩幅に開いて立ちます。
(開始姿勢: 左右の足になるべく均等に体重をかける様に気をつけます)
③ そのまま胸の前で組んだ腕を左右にリズミカルに揺らせるようにして、左右の足に体重移動を行います。 この時に頭は常に垂直になるようにします。 さらに肩甲骨はできるだけ左右が同じ高さになるように気をつけます。
(開始姿勢)
(健側へ体重移動 健側の足に体重を移し組んだ腕を健側に振ります 背骨は反対方向に戻すように反らせます)
(麻痺側へ体重移動 麻痺側の足に体重を移し組んだ腕を麻痺側に振ります 背骨は反対方向に戻すように反らせます)
(また健側に体重を移動します)
この運動をバランスに注意しながら、リズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
※ 転倒に気をつけて無理をしない様に少しずつ体重移動を増やしましょう。
立っていてリズミカルに前後のバランス運動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 手すり
運動時間
5~10分
運動内容
① まず手すりにつかまって立ちます。 この時に手すりより半歩後ろに立ちます。
② ついで麻痺側の腕を健側の腕に乗せるように腕を組んで、健側の手で麻痺側の肘をつかんで支えます。足は肩幅に開いて立ちます。
(開始姿勢: 左右の足になるべく均等に体重をかける様に気をつけます)
③ 組んだ腕を胸の高さに持ち上げます。
④ そのまま胸の前で組んだ腕を前後にリズミカルに揺らせるようにして、前後に体重移動を行います。 この時に頭は常に垂直になるようにします。 さらに肩甲骨はできるだけ左右が同じ高さになるように気をつけます。
(開始姿勢)
(組んだ腕を前に突き出します、この時に背骨を反らせてバランスをとります)
(組んだ腕を後ろに引いて、体重を後ろに移します。 後方への転倒に注意して行ってください)
(ふたたび組んだ腕を前に突き出します)
この運動をリズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
※ 転倒に気をつけて無理をしない様に少しずつ体重移動を増やしましょう。
立っていてリズミカルに左右の足への体重移動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 手すり
運動時間
5~10分
運動内容
① まず手すりにつかまって立ちます。 この時に手すりより半歩後ろに立ちます。
② 左右の足を肩幅に開き、骨盤を左右に移動する様にして、左右の足に体重移動を行います。 この時に頭は常に垂直になるようにします。 さらに肩甲骨はできるだけ左右が同じ高さになるように気をつけます。
(開始姿勢)
(健側の足に体重をかけていきます。 骨盤を動かして体重を移動し、爪先に多めに体重をかける様に意識します)
(ついで麻痺側の足に体重をかけていきます。 骨盤を動かして体重を移動し、爪先に多めに体重をかける様に意識します)
(さいど健側の足に体重を移動します)
この運動をリズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
※ 体重移動は腰を意識して行い、肩や上半身を突っ込まない様に気をつけます。
※ 転倒に気をつけて無理をしない様に少しずつ体重移動を増やしましょう。
立っていてリズミカルに麻痺側の足への体重移動の練習を行います
リスク
(以下の疾患がある場合は行わないで下さい)
⑴ 小脳性失調症
⑵ 視床痛
必要な機材
⑴ 手すり
運動時間
5~10分
運動内容
① まず手すりにつかまって立ちます。 この時に手すりより半歩後ろに立ちます。
② 麻痺側の足を一歩前に出します。 そしてその足に体重をかけます。 体重移動は麻痺側骨盤を中心に行い、肩が先に突っ込まないように気をつけて下さい。
( 麻痺側足を一歩前に出します)
(麻痺側足に体重をかけます 体重移動は麻痺側骨盤で!)
(開始時の姿勢に戻します)
この運動をリズミカルに「イッチに、イッチに」と拍子を取りながら5~10分程度行ってください。 はじめは体重の移動は少なめにして、力まずにリズムをとることを優先して運動を行ってください。 上手にできる様になったら、体重移動を少しずつ増やしていきます。
動作時にフラつかない身体の軸を作るためにバランスの技を磨く運動は以上です。 簡単な運動ですが、動作を意識せず、力まず、リズミカルに行えるようになるには結構な修練が必要ですが、意識しないで上手にできる様になれば安定した動作で歩行の能力を高めたり、手の麻痺を改善するリハビリテーションも効果的に行えるようになりますので、しっかり頑張ってくださいね。
次回は
「脳卒中片麻痺を改善するファシリテーションテクニックについて」
について解説を開始します。 よろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございます
注意事項!
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました!
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
現在の日本国内で、このレベルの在宅リハビリは他にはないと思います。
そしてこのプログラムは施設での実施にて、すでに結果が認められています。
あとは皆さんの継続力だけですね。
テキストは電子書籍になっており、インフォトップと言う電子書籍の販売ASPからのダウンロードになります。
全180ページに数百点の写真と3D画像などで分かりやすく解説しています。
コピーが容易な電子書籍の性格上、少し受注の管理やコピーガードなどが厳しくなっていますが、安全にご利用いただくためですの、ご容赦くださいね。
ぜひ一度お試しください。
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