戦略的脳卒中自主トレリハビリテーションとは?
臨床経験25年のPT 松澤
みなさん普通の脳卒中自主トレリハビリと戦略的脳卒中自主トレリハビリの違いがわからなくて、イマイチ効果的な自主トレリハビリが行えていないようですね。
今日は、戦略的脳卒中自主トレリハビリを正しく行って、あなたも驚くような改善効果が得られるように、勉強していきましょう。
退院後のリハビリに悩む右片麻痺のAさん
脳卒中になって、最初に病院に入院していた時には、リハビリをやって、ある程度は体が動くようになって、歩いてトイレにも行けるようになったが、右手はあまり動かないままで退院して、それきり手のリハビリは大してやってもらえなくなってしまった。
歩き方も今ひとつ、うまく歩けていない気がするが、どこが悪いかがわからない。
PT 松澤
脳卒中のリハビリを行っていて、体の機能の回復には2段階あるのです。
まず1段階目は、急性発症からだいたい6ヶ月までの期間です。
この間に起こる体の機能の回復は、主に最初の発作時のショックで、休眠状態になっていた脳神経細胞の活動が徐々に再開されることで、ドンドン機能が回復していく期間です。
Aさん
なるほど!
それで意識が戻ってからしばらくはドンドン動けるようになっていったのか!
でもその後は、あまり麻痺が良くならなくなってしまった。
PT 松澤
確かに最初の数ヶ月は点滴を打って適当に運動していれば、ドンドン麻痺が回復していきます。
でも休眠状態の脳神経細胞の回復が終わってしまえば、最後には死滅した脳神経細胞の分だけの片麻痺が残ってしまいます。
そしてだいたいは、この期間が終了した段階で、病院から退院することになります。
Aさん
そうなのか!
でも退院してから通い始めたデイケアでは、病院でやっていたほど丁寧にリハビリをやってもらえなくなってしまった。
だから自分で頑張って良くしようと思って、いろいろと頑張ったけど、かえって肩や腰が痛くなってきてしまった。
退院したての頃と比べると、だんだん体の動きが悪くなっている気がする。
PT 松澤
そうですね!
発症から6ヶ月以降、病院を退院してからが、リハビリの第2段階に入るのですが、ここからは休眠細胞の復活はもうありませんから、ただ普通に運動しているだけでは、麻痺は改善してきません。
これからは戦略的なプログラムが必要になります!
Aさん
でも自分で一生懸命に自主トレをやったけど、かえって肩や腰が痛くなって動けなくなってしまった。
病院を退院する時に主治医の先生が「もうこれ以上は良くならない」と言っていたから、もう無理なんじゃないか?
PT 松澤
それはAさんが、病院でやっていたリハビリのプログラムを、そのまま自宅で続けてしまったからです。
病院で行っていたリハビリは、休眠細胞の回復に合わせた、日常生活訓練を中心にしたプログラムですから。
この第2段階のリハビリでは、もっと戦略的に、脳卒中の機能不全の原因となる問題点を、ひとつひとつ解決していかなくてはなりません。
Aさん
なるほど!
まだまだ良くなる可能性があるんだね。
でもどうすればいいのかな?
PT 松澤
例えば Aさんの肩の痛みとこわばりですが、それは脳卒中の痙性麻痺で、もうこれ以上良くならないと思っていませんか?
Aさん
違うのか?
PT 松澤
実は脳卒中片麻痺の手足の筋肉のこわばりの何割かは、筋肉自体のコリなんです。
慢性的な筋緊張や、急性期の浮腫のせいで筋肉がこわばってしまっているのです。
これは脳卒中の神経麻痺によるこわばりではありませんから、筋肉のコンディションを整えれば良くなる可能性が高いのです。
ただし筋硬結という筋の線維化を伴ったコリですから、普通のマッサージや鍼治療などでは改善できません。
マイオセラピーという特殊なマッサージか、超音波マッサージが必要になります。
Aさん
そうするとそのマッサージを受ければいいのかい?
PT 松澤
ただしマイオセラピーができるセラピストは、非常に少ないので、Aさんの近隣で、見つけることはむずかしいでしょう。
それよりは超音波マッサージをお勧めします。
最近は超音波治療器も安くなって、2万円程度で購入できるようになりました。
Aさん
うーん。
でもそれで肩の痛みが取れて、腕が動くようになるならコストパフォーマンスは良いのかな?
PT 松澤
それだけではありません。
超音波治療器は、指を動くようにするためのマッサージや、足のつっぱりをとるためにも使えます。
ご家族の肩こりや腰痛の治療にも使えますよ。
超音波マッサージは簡単にできますから、ご本人やご家族で、好きな時に行うことができます。
Aさん
それでその超音波マッサージをやれば、肩のこわばりが取れて、腕が動くようになるの?
PT 松澤
マッサージで筋肉のコリをほぐすと、かなりこわばりが良くなります。
痛みも取れてきます。
でもそれだけでは十分ではありません。
実は脳卒中の筋肉のこわばりの原因として、まだまだいくつか解決しなければならない問題があります。
Aさん
そんなにあるの?
PT 松澤
そんなに沢山はありません。
まずは自律神経の働きを整えていきます。
自律神経というのは、交感神経と副交感神経からなる、体の機能を調整する神経です。
車のエンジンで例えれば、自律神経はアイドリング調整にあたります。
脳卒中片麻痺の場合は、主に交感神経が強く働くことで、全身の筋緊張が高まるようになります。
この筋緊張の高まりは、例えば Aさんがリビングでくつろいでお茶を飲んでいる時にも、体はこわばって緊張したままの状態になることを意味しています。
この状態で生活していると、筋肉が常に休まらずに、硬くこわばって凝り固まって行ってしまいます。
Aさん
自律神経なんて、普段はあまり気にしてないけど、重要な働きをしているんだね。
でもどうすれば自律神経の働きを整えられるの?
PT 松澤
自律神経を整えるには、背骨を支える脊柱起立筋群のこわばりをほぐしてやるのが一番です。
脊柱起立筋の脇には、交感神経管と呼ばれる、自律神経が通っていて、脊柱起立筋群をほぐすことで、交感神経の興奮を抑える効果があるのです。
Aさん
なるほど、ここでも筋肉の緊張をほぐすことが大事になるんだね。
他には何をすればいいの?
PT 松澤
次も聞きなれない言葉が出てきて申し訳ないのですが!
大脳基底核と視床による運動コントロール回路のリハビリを行います。
Aさん
大脳基底核と視床!
また難しい名前が出てきたよ(泣)
PT 松澤
本当にすみません(泣)
でも簡単に説明すると、大脳基底核と視床は、大脳の根元のところにあって、視覚などの感覚情報や体からの情報を統合して、動作を組み立てる働きをしています。
特に大脳基底核は、視床で統合された動作の中で必要な動作を進めて、不要な動作を抑えるアクセルとブレーキの働きをしています。
ですからアクセルとブレーキが故障すると、体がこわばってギクシャクしてしまうのです。
また大脳基底核と視床は、熟練したスムースな動作とリズム感に関係しているので、ここの調子が悪くなると、リズム感が悪くなり、動作がぎこちなくなったり、足がすくんだりしてしまいます。
Aさん
大脳基底核と視床の働きが大切なのはわかったけど。
それならどうすればいいの?
PT 松澤
大脳基底核と視床の機能を高めるためのリズム運動や専用の運動を行います。
時間をかけて、じっくり練習することで、少しずつ効果が出てくることが期待できます。
Aさん
なるほど!
ただ運動するのではなく、戦略的に目的を持って運動をすることが必要なんだね!
他にはどんなことが必要になるのかな?
PT 松澤
あとはもう一歩です!
今までの方法で、身体のこわばりをとった後は、大脳の運動野に力まない運動をもう一度インプットするための練習を繰り返し行っていきます。
この運動は、神経促通運動といって、脳卒中の片麻痺を改善するために、脳の神経の運動経路をもう一度作りなおすための、最終段階の運動方法です。
この運動を効果的に行うためには、これまでご紹介してきた、いくつかの問題点を、ある程度解決しておかないとなりません。
でないと効果が期待できないのです。
これらのプログラムで、どこまで改善できるかは個人差がありますが、何もしないでいるよりは、明らかに効果が出てくることは間違いありません。
Aさん
なるほど!なるほど!
そうだね、何もしないより、自分の力で前に進むことは大切だね!
でもすごく難しそうだね。
私にできるかな?
PT 松澤
大丈夫ですよ!
焦らないで、少しずつ勉強しながら、一歩一歩前に進んでいきましょう!
このリハビリの方法は、始めるのに遅すぎるということはありませんから!
ご自分のペースでいいのです。
焦らず、でも毎日少しずつ確実に前に進んでいきましょう!
Aさん
了解しました!
頑張ってみようかな!
Aさんも経験ありませんか?
毎日散歩するようになったら、ダイエットが進んでスタイルが良くなったとか。
交差点で簡単な足踏み練習を続けていたら、腰痛が良くなったとか。
毎日継続する運動には、素晴らしい効果が期待できるのです。
これをもし脳卒中片麻痺の改善に効果が期待できる運動に置き換えたらどうでしょう。
毎日継続する運動には、本当に素晴らしい効果があるのです。
Aさん
そうなんだね!
毎日、戦略的な運動を習慣をつけて継続することが大切なんだね!
なんだか先の希望が見えてきた気がするよ!
PT 松澤
皆さんも難しそうだと尻込みしないで、一歩ずつ戦略的脳卒中自主トレリハビリを試してみてください!
焦らなくても、きっとできるようになりますよ!
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました!
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
現在の日本国内で、このレベルの在宅リハビリは他にはないと思います。
そしてこのプログラムは施設での実施にて、すでに結果が認められています。
あとは皆さんの継続力だけですね。
テキストは電子書籍になっており、インフォトップと言う電子書籍の販売ASPからのダウンロードになります。
全180ページに数百点の写真と3D画像などで分かりやすく解説しています。
コピーが容易な電子書籍の性格上、少し受注の管理やコピーガードなどが厳しくなっていますが、安全にご利用いただくためですので、ご容赦くださいね。
ぜひ一度お試しください。