小児リハビリ

脳性小児麻痺への小児ニューロリハビリテーションのススメ!

 

はじめに

脳性小児麻痺のお子さんに対するリハビリテーションは、これまでは人間発達学的な観点をひとつの重要な指標として行われてきていました。

つまりは正常児の神経の発達過程を、ひとつの指標として、それをなるべくなぞるようにリハビリテーションを進めていくという方法論です。

しかし21世紀に入って、脳科学が格段に進歩してくると、これまでの人間発達学的な小児リハビリテーションは、いかにも20世紀的であり、クラシカルな印象となっています。

現在の成人に対するリハビリテーションは、「日常生活動作練習型リハビリテーション」から、「ニューロリハビリテーション」に移行しつつあり。

脳科学的な知見をもとに、リハビリテーション界隈を席巻しつつあります。

この脳科学を根拠にした、新たなリハビリテーション技術である「ニューロリハビリテーション」は、当然のこととして小児リハビリテーションにも波及しつつあります。

何故ならば、子供も大人も、脳みその働きはほとんど一緒だからです。

筆者はここ数年の間、小児領域のニューロリハビリテーションを、臨床で試みてきました。

その結果として、小児リハビリテーションの領域こそが、最もニューロリハビリテーションの技術的恩恵を受ける分野であると確信しています。

今回は、「小児ニューロリハビリテーション」の入門編として、これまでの小児リハビリテーションと小児ニューロリハビリテーションとの違いについて解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

関連記事
脳性小児麻痺ってリハビリで治せるの? 小児ニューロリハビリの可能性について!

 

ニューロリハビリテーション(神経リハビリテーション)とはなんなのか?

最近は少しずつ耳にすることが増えてきた、ニューロリハビリテーションという言葉ですが、このニューロリハビリテーション(神経リハビリテーション)とはどんなものなのでしょう?

また小児麻痺におけるニューロリハビリテーションとは、どんなやり方をするのでしょう?

まずは成人のリハビリテーションについてですが、これまでの成人のリハビリテーションは、主に後遺障害である麻痺が起きたのちに、残された(麻痺していない)機能を活かしながら、日常生活を自立させていくスタイルが主流でした。

いわゆる日常生活動作練習型のリハビリテーションです。

この日常生活動作練習型のリハビリテーションとは、麻痺の回復を目指すのではなく、麻痺を免れて残された残存機能をうまく利用して、なんとか上手に日常生活を送る練習を行うという考え方です。

どうしてこのようなリハビリテーションが主流になって来たのかというと、かつて神経細胞のシナプスを発見した、スペインの偉大な神経解剖学者である Cajal博士が「一旦破壊された成体の神経細胞は再生しない」と断言したため、脳卒中などの麻痺が回復することはないと、長い間、信じられて来たからです。

しかし21世紀になると、脳神経細胞が部分的ではあれ、再生することが発見されたのです。

この発見によって、リハビリテーションも、「残存機能を生かす練習」から、「麻痺を治すために神経再生を目指す治療」に変化して来たのです。

では小児のリハビリテーションは、ニューロリハビリテーションでどう変わっていくのでしょう?

 

小児ニューロリハビリテーションとは?

ではこれまでの小児リハビリテーションはどうだったでしょう。

これまでの小児リハビリテーションは、「人間発達学」を基礎としたアプローチを主流として来ました。

要するに、健常な子供がたどる精神や運動機能の発達の過程を、なるべくなぞるように発達を促すことで、正常な神経機能に近づける試みを行って来ました。

それがこれまでの小児リハビリテーションの基本的な考え方であると言えます。

しかし21世紀に入ってからの、目覚ましい脳科学の発達により、脳の神経機能が解明されていくにつれ、単に健常児の発達過程を真似するだけのアプローチでは、未熟な脳神経の発達を効果的に促すことは難しいことが分かって来ています。

障害された脳神経機能を、なるべく効果的に発達させていくためには、脳神経の機能を十分に理解した上で、効果的なアプローチを選択していかなくではなりません。

つまりなんらかの周産期の問題により、未発達のままになってしまった脳神経細胞に対して、より神経科学的に専門的なアプローチを行うことで、脳神経細胞の発達を促すのが「小児ニューロリハビリテーション」なのです。

では「小児ニューロリハビリテーション」とは具体的にはどのようなアプローチを行うのでしょう。

 

小児ニューロリハビリテーションのアプローチの基礎となる考え方

① ミクログリアに対するアプローチ

いきなり「ミクログリア」と言われても、なんのことか分かりませんよね。

すみません!

ここで少し「ミクログリア」の説明をさせてください。

脳の神経細胞には、大きく分けて2種類あります。

これが「シナプス細胞」と「グリア細胞」です。

「シナプス細胞」はあなたもある程度は聞いたことがあると思います。

「シナプス細胞」は、脳の機能の基本となる、神経信号を伝達することで、物を考えたり、手足を動かしたりといった、脳が脳であるゆえんとなる、神経活動を行う、いわゆる神経細胞です。

それに対して「グリア細胞」とは一体なんでしょう?

この「グリア細胞」は、さらに「アストロサイト」や「オリゴデンドロサイト」、「ミクログリア」などに分けられます。

ここでようやく「ミクログリア」が出て来ましたね。

ではこの「ミクログリア」は、脳の中で、どのような働きをしているのでしょう?

「ミクログリア」の働きは、簡単にいうと、シナプス細胞のシナプスの管理です。

シナプス細胞は、樹状突起などの枝を伸ばしていって、他の神経細胞(シナプス細胞)と、シナプス接続を作ることで、神経ネットワークを作っていきます。

このネットワークが「神経単位」として、指を動かすなどの活動を、いくつかのシナプス細胞で連携して行っているのです。

「ミクログリア」は、このシナプス細胞のシナプスによる連携を、強めたり弱めたりして調節します。

また不要なシナプスを切断したり、不要なシナプス細胞を破壊したりもします。

よく小さな頃は手足が動いていたけれど、大人になるにつれ、手足がこわばって動かなくなってしまう場合がありますね。

これは「ミクログリア」が、正しくシナプスを管理できなくて、本来は必要なシナプス接続を切断してしまったり、シナプス細胞を破壊してしまったことで起きると考えられます。

ですから「ミクログリア」の働きを、キチンとコントロールすることは、ニューロリハビリテーションにおいては、もっとも基本的なアプローチになります。

 

② 運動学習の効果を高める

ニューロリハビリテーションの目的は、脳の神経細胞を再生して、麻痺を改善することです。

そして脳の神経細胞を再生するための、リハビリテーションアプローチの基本は「運動学習」にあります。

この運動学習を効果的に行うための基本としては、感覚フィードバックをキチンと出来るように、身体のコンディションを整えることにあります。

実は「運動学習」とは、脳の運動野で作られた「運動指令」と、実際にその運動指令によって行われた動作の「感覚フィードバック」が照合されることで、行われます。

そして適切な運動学習が繰り返し行われることで、脳の神経細胞が再生されていくのです。

では「感覚フィードバック」を適正に行うためには、どのように身体のコンディションを整えればいいのでしょうか?

実は「感覚フィードバック」は、手足を動かしている筋肉の線維の中にある「感覚センサー」によって、行われています。

小児麻痺のお子さんは、生まれた時から、手足の筋肉が硬くこわばっていることがほとんどですよね。

実はこの手足の筋肉がこわばっていると、筋肉の線維の中の「感覚センサー」がうまく働かないのです。

そのために「感覚フィードバック」が適切に行われなくて、「運動学習」が進まないために、いくら運動させても麻痺が良くならないのです。

実はほとんどの脳性麻痺のお子さんの、手足の筋肉のこわばりは、ていねいなマッサージを行うことで柔らかくなるのです。

ですがこれまでは生まれつき硬い手足のこわばりは治らないと考えられていたので、適切なアプローチが受けられていなかっただけなのです。

まずは我が子の手足の筋肉を揉みほぐすことが、とても重要になります。

 

③ お子さんの「身体図式」を育てます

この身体図式という概念は、少し説明が難しいのです。

例えば、あなたは自分の手足が、自分の体から生えていて、それが自分のものだとしっかり認識していますよね。

さらにその手足が、どんな働きをするのかも良く分かって、日常の生活の中で使いこなしています。

自分の手足なのですから当然といえばその通りです。

さらには、あなたはこんなことも分かります。

例えば目の前に段差があったとして、その段差が、簡単に乗り越えられるか、難しいかが、見ただけでおよそ見当がつきますね。

または頭の上に柿の木の枝があって、その枝に柿の実がなっていたとして、その実に簡単に手が届くのか、あるいは脚立が必要か、見ただけで分かります。

これらの感覚全てが「身体図式」という、漠然とした、自分の体に対する意識となります。

そしてこの「身体図式」が、自分の身体を制御して動かすために、とても重要なのですが、脳性麻痺のお子さんの多くには、この「身体図式」がキチンと育っていないのです。

「身体図式」がしっかりしていない状態で、いくら運動の練習をしても、脳の神経は再生してくれません。

この「身体図式」をキチンと育てるためのアプローチもニューロリハビリテーションの大切なプログラムになります。

 

④ 様々な脳の神経回路を使った運動制御を獲得する

自分の身体を正確に動かして、目的の動作を行うためには、手足が動かせる(麻痺がない)だけでなく、その動作がキチンと制御できなくてはなりません。

例えば目の前のコップを持ち上げて、中の水を飲む動作をする場合はどうでしょう。

コップに向かって正確に腕を伸ばさなくてはなりません。

またコップの形に合わせて、キチンと持てるように、指の動きも細かい調節が必要になります。

さらに腕を伸ばしてコップを持ち上げるためには、姿勢を制御して、身体のバランスも調節しなくては倒れてしまいます。

またムセないで、安全に水を飲むためには、それまでの呼吸をいったん止めて、気道ではなく、食道に水を吸い込まなくてはなりません。

これも呼吸運動と嚥下運動の、運動パターンの制御になります。

目的の動作を達成するためには、たとえ水を飲むだけでも、これらの運動を、キチンと制御しなければなりません。

そしてこれらの運動制御は、脳の様々な領域が連携しながら行っています。

ですので、適切な運動制御による目的動作の遂行には、これらの脳の領域全てに、適切なニューロリハビリテーションによるアプローチが必要になるのです。

 

⑤ 動作の目的をキチンと理解してもらう

ニューロリハビリテーションは、脳の神経を再生するためのアプローチです。

ですから一番大切なことは、なぜこの練習をしなくてはならないのか。

なぜ自分は頑張る必要があるのかを、お子さんにキチンと理解してもらうことが、一番重要になります。

なぜならば意欲を持って取り組まないと、神経細胞は反応して、再生してくれないからです。

よくお子さんが泣いているのに、無理やりうつ伏せや四つ這いの練習をしているケースがあります。

でもうつ伏せや四つ這いをやらされて、泣いている場合は、なんらかの原因で、お子さんはその動作を怖がっているのです。

怖がっている動作を、いくら無理やりやらせても、脳の報酬系が作動しないので、運動学習は強化されません。

大切なことは、その運動が自分にとって大切で、必要なことで、挑戦する価値があるのだと、お子さんに理解してもらうことです。

そして勇気と希望を持ってリハビリテーションに取り組んでもらえるように促していくことが、一番大切なことなのです。

ですからお子さんが嫌がることを強制するのではなく、楽しんで出来ることから、少しずつ成功体験を積み上げていきます。

そうやって少しづつ自信を高めていくことで、それまでは怖くて出来なかったプログラムも、勇気を持ってチャレンジできるように導いていくのです。

 

小児ニューロリハビリテーションのススメ

小児ニューロリハビリテーションを試して見て、これまでは治らないと諦めていたケースでも、大きな可能性を秘めているお子さんが、大勢いることが分かってきています。

確かに全てのケースで、望む通りの結果が得られているわけではありません。

しかし希望が絶たれてしまい、全く可能性がないわけでもありません。

これから小児ニューロリハビリテーションがさらに発展して、多くのお子さんに可能性が広がるといいなと願っています。

 

まとめ

今回はあまりまとまった文章が書けなかったのですが、今後、このサイトで、小児ニューロリハビリテーションの詳細な解説をしていきたいと考えています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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