小児リハビリ

脳性麻痺のニューロリハビリ ウチの子はどうして手に触ろうとすると慌てて引っ込めるのか?

 

はじめに

脳性麻痺のお子さんの中で、ご両親がお子さんの手に触ろうとすると、素早く手を引っ込める動作をする子がいます。

そして手を引っ込める動作をするお子さんは、反射的に鼻のチューブを抜いてしまったりしますが、自分から何かを持つことはありません。

またしつこく指を触ろうとすると、必死になって指を引っ込めて守ろうとします。

お子さんが、こういった行動をする原因は、お子さんの「身体図式」と呼ばれる、自分の身体に関する認識が、その指先にまで成長してきていなことが原因で起こります。

また脳の運動制御と、指先のコントロールの発達の関係も問題になります。

今回は、脳性麻痺のお子さんが、手を引っ込めてしまう現象と、その原因となる手の「身体図式」などの関係について解説したいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

手を触ろうとすると引っ込める現象について!

脳性麻痺のお子さんの手を触ろうとすると、慌てて手を引っ込めて、相手の手から自分の手を守ろうとする様な行動をする、お子さんがおられます。

彼らは、なかなか自分の手に触らせてくれません。

また少し手に触られることに慣れてきたとしても、手のひらなどは触らせてくれても、指先はなかなか触らせてくれません。

そして反射的に鼻のチューブを抜いたりすることはあっても、自分の手でなにかの物を持って操作するということは、なかなか出来ません。

これはお子さんの「身体図式」と呼ばれる、身体に対するイメージングが、その指先にまで成長してきていないことが、原因で起こっているのです。

 

「身体図式」とはなにか?

ここでまずは「身体図式」について、少し解説しておきたいと思います。

一般的な身体に対するイメージとは、「太っている」とか「痩せている」とか、あるいは「足が長い」とか「手が短い」といった客観的で、具体的なイメージだと思います。

しかし「身体図式」とは、この様な身体イメージとは違い、もっと漠然とした主観的なイメージになります。

たとえば、あなたが座っている目の前のテーブルに、水の入ったガラスのコップがあったとします。

あなたはコップを見ただけで、そのコップを自分の指で、どうつかむかがイメージできています。

またコップの大きさや、中に入っている水の量から、そのコップを持った時の重さや、手触りも、なんとなく予測できています。

こんな漠然とした感覚が「身体図式」なのです。

しかしこの「身体図式」が、私たちが自分の手足の動きをコントロールする上で、とても重要な働きをしています。

 

手と指の「身体図式」はどうなっているのか?

脳が手や指の動きを制御する場合、脳の中に、その手や指に対する「身体図式」が出来ていなければなりません。

つまりは自分の手や指が、どんな形をしていて、どんな風に動くのか、そしてどんな働きをするのかについて、自分で理解できていなければ、運動神経によって適切な運動指示を出すことは出来ないのです。

では脳性麻痺のお子さんの、手や指の身体図式は、いったいどうなっているのでしょうか?

上の写真を見てください。

これは「ミノカサゴ」という魚です。

とてもきれいですね。

普通の魚であれば、ヒレの形は、ここまで複雑ではないですが、この魚はとても複雑でキレイなヒレを持っています。

おそらくは脳性麻痺のお子さんが、自分の手や指に対して持っているイメージ、つまりは「身体図式」は、このミノカサゴのヒレみたいな感じなのではないかと推測しています。

つまり脳性麻痺のお子さんは、脳の感覚神経や運動神経が未成熟なため、けっこう複雑な形をしている、自分の指の形や動きが、しっかりと認識できず、なんとなく複雑にヒラヒラしている、ミノカサゴのヒレみたいな印象を持っていると考えられます。

あるいはこの写真の様な、イソギンチャクの触手みたいなイメージかもしれません。

もしイソギンチャクの触手に触ったら、その触手はどんな反応をするでしょうか?

そうですね、あわてて触手を引っ込めます。

イソギンチャクの触手が、あなたの手をとって握手するなんて、あまりイメージできませんよね。

つまりは脳性麻痺のお子さんは、自分の手の指が、なんとなく複雑な構造で、ゆらゆらしている、ミノカサゴのヒレか、イソギンチャクの触手みたいに感じているのです。

ですから触ろうとすると、あわてて引っ込めるのです。

お子さんが、ご自分の手で何か物を持って、操作できる様になるためには、この手の指の「身体図式」のイメージを、ミノカサゴのヒレから、きちんと物を触って持つことができる、ヒトの指に変えていかなくてはならないのです。

 

対象となる物の形にあわせた指の動きの制御!

もう一つ重要なのは、複雑な指の動きの制御についてです。

 

1次運動野での指の制御

指の動きの制御については、単純な指の曲げ伸ばしなどの運動制御は「1次運動野」で制御しています。

ですからお子さんの指の動きが、ぎこちなかったり、常に安定して動かせなかったりする場合には、この1次運動野の指の動きを制御するための、運動神経細胞を増やしていかなくてはなりません。

これを神経の運動単位を増やすと言います。

まずはそのためのニューロリハビリのアプローチを行う必要があります。

 

高次運動野での指の制御

次に手の指は、基本的にはなにかしらの物をつかんで、それを操作するためにあります。

ですから指の動きは、その対象となる物の形をシッカリと認識したうえで、それにあわせた指の動きを計画しなければなりません。

このような高度で複雑な指の制御は「高次運動野」で行われています。

そして物の形にあわせて、指を動かすためには、シッカリとその物を目で見て、視覚的に形を判別したうえで、それにあわせた指の動きをしなければなりません。

そのためには視覚野や統合感覚野と運動野が、上手に連携して働かなくてはなりません。

ですからそれらの神経経路のシナプス結合を強化するための、ニューロリハビリのアプローチも行う必要があります。

 

 

このようにお子さんが、なかなか物に触れなかったり、指先に触らせてくれない場合には、⑴ 指の身体図式を育てるアプローチと ⑵ 操作する物の形にあわせた複雑な指の運動制御 が両立してできるようになっていなければならないのです。

 

まとめ

脳性麻痺のお子さんが、手に触らせてくれない場合、そのお子さんの手の指に対する「身体図式」が発達していないことが考えられます。

またお子さんが、物をつかんで操作することができない場合、指の身体図式の未発達に加え、視覚情報や統合感覚情報と連携して、その物の形にあわせた、高次運動野による指の運動制御ができていなことが考えられます。

小児ニューロリハビリテーションによって、これらの神経機能の発達を促すことで、手の機能を発達させることが可能になるのです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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