はじめに
なく子はいねガ~♪
うつ伏せにされて、泣いてる子はいねガ~♬
今日も子供が泣いてるぜ。
どういう訳だか、小児リハビリの世界では、子供のうつ伏せ練習が、必須の練習のようになっています。
それはもう側で見ていて、強迫観念に近いものがありますね。
小児のリハビリセンターのなかには、嫌がる子供を無理やりうつ伏せにして、子供がみんなギャンギャン泣いている、まるで阿鼻叫喚の地獄絵図みたいになっていることも、あったりなかったりしますね www。
確かに小児のリハビリを行っていて、ここでうつ伏せや四つ這いを練習してくれたら、話が早いのになあと思う時もあります。
でも泣くほど嫌がることを、無理強いしても効果はありません。
これは断言できます。
運動発達は、あくまでも運動学習によって達成されますから、お子さんが自分から意欲を持って学習しないと身につきません。
大人のリハビリと違って、子供のリハビリは、この子供のヤル気スイッチを探すのに、けっこう手間取ってしまいます。
運動学習は泣きながらやっても、決して身につきません。
ましてやこんな小さな乳幼児に、あんなことやこんなことは厳しすぎます。
という訳で、今回は大切な(?) うつ伏せや四つ這いの練習を、泣かずに楽しくやる方法について、解説してみたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
脳性麻痺の子はどうしてうつ伏せにされると泣くのか?
健康なお子さんであれば、だいたい生後6ヶ月くらいで、寝返りをはじめます。
それは初めは、両足を動かしていて、勢いよく振り回した拍子に、アレっと思う間に、ひっくり返っってしまう事がきっかけだったりします。
でもそれは健康なお子さんにとっては、泣くほど恐ろしい事ではないようです。
初めは、偶然うつ伏せになってしまい、焦っていたりしますが、すぐに仰向けに戻る方法を見つけてしまいます。
そうしてケロッとしていて、次からは自分からわざと、うつ伏せに寝返ったりします。
健康なお子さんにとっては、それはほんの微かな人生の通過点にすぎません。
しかし脳性麻痺のお子さんにとっては、うつ伏せというのは、大変な試練のようです。
セラピストに無理やりにうつ伏せにされて、ギャンギャン泣いていたりします。
脳性麻痺のお子さんにとっては、うつ伏せというのは、とても恐ろしい事らしいですね。
どうして脳性麻痺のお子さんにとっては、うつ伏せというのは、そんなに大変な事なのでしょう?
それにはいくつかの理由があるようです。
脳性麻痺のお子さんがうつ伏せを怖がる理由
⑴ 背骨の周りの筋肉がカチカチで背骨が動かせない
脳死麻痺のお子さんの多くは、生まれてからすぐに、生きるか死ぬかの試練を経験しています。
そのために自律神経は緊張して、全身の筋肉は硬くこわばってしまいます。
ですから保育器から出て来た段階で、お子さんの手足の筋肉は、けっこうカチカチになっています。
でもカチカチになっているのは、手足の筋肉だけではありません。
背骨のまわりの筋肉である脊柱起立筋群もカチカチにこわばってしまっています。
そうなると、背骨がしなったり、回転したりができなくなります。
ですから体全体が、ひとつの塊みたいになって、カチカチに固くなってしまいます。
ちょっと見には鮭トバみたいに硬そうです。
そうなると寝返りするときに、肩と腰がしなるように回転しませんから、寝返りするときにも、体全体がドーンと一気に回ってしまいます。
ここで少し想像力を働かせて、考えて見てください。
肩や腰がしならないで、ひとつの塊のなったまま、横にドーンと回されることを。
それはたとえば、あなたが担架にカッチリ固定されて、体も手足も動かせない状態で、その担架をグルンとひっくり返されたらどうでしょう?
とても怖そうですよね。
それに対して、肩や腰が柔らかくしなっている場合は、たとえば無理やりに腰を押されて、寝返らされたとしても、上半身は腰や肩がしなることで、ゆっくりと自分のタイミングで寝返る事ができます。
これなら怖くありません。
そうですね、脳性麻痺のお子さんが、うつ伏せを怖がるのは、背骨がかたくしならないために、恐怖を感じているのです。
ですから対策としては、まずは背骨や肩や腰の、筋肉のこわばりをほぐしてやる必要があります。
⑵ 自力でのうつ伏せからの復帰ができない
もうひとつの脳性麻痺のお子さんが、うつ伏せを怖がる理由は、うつ伏せから自力で仰向けに戻れない事です。
これは健康なお子さんでも、ときどきおちいるジレンマですね。
うつ伏せになったはいいが、元に戻る方法が分からなくて、泣いてお母さんを呼んだりします。
そうするとキッチンで料理をしていたお母さんが、あわてて飛んで来て、抱き起こしてくれます。
しかし脳性麻痺のお子さんの場合は、悪魔のように怖いセラピストのお兄さんと、あろうことかお母さんまでがグルになって、無理やりにうつ伏せにしようとしますから、その恐怖と絶望感たるや、想像を絶しますね。
私が子供なら、この段階で親も誰もかれも信じられなくなって、グレてしまいます。
この自力で仰向けにも倒れない恐怖に対する方法は、自力で戻る練習を優先して行うことです。
まずはうつ伏せの練習をするのではなく、うつ伏せから戻る練習からはじめます。
そうすることで、うつ伏せへの練習と、うつ伏せの恐怖を克服するための練習が、同時に行えるという訳ですね。
うつ伏せの恐怖を克服する具体的なリハビリテーション方法
では実際に、うつ伏せの恐怖を克服して、自分からうつ伏せの練習をできるようにするリハビリテーション方法を解説していきます。
⑴ 背骨・型・腰の周囲の筋肉をほぐす
まずは一番はじめのアプローチとして、背骨のまわりの筋肉(脊柱起立筋群)や、腰や肩の周りの筋肉を、しっかりと揉みほぐしてやります。
それから横向きに寝た状態から、腰と肩を前後に入れ違いに引っ張って、腰の筋肉をストレッチします。
さらに肩のところの肩甲骨をしっかり両手でホールドして、ゆっくりと揺らすように動かして、肩甲骨の周りの筋肉をほぐしていきます。
脳性麻痺のお子さんの筋肉のこわばりは、中には神経系の問題である場合もありますが、多くは産まれてからの様々なストレスによります。
ですからキチンとマッサージを続けると、けっこう柔らかくなりますよ。
⑵ 横向きの寝返りから戻る練習
筋肉がほぐれて来たら、今度はお子さんを横向きにします。
そこから自分で肩を後ろに引くように促し、自力で仰向けに寝返るように練習します。
横向きからの寝返りは、肩さえ後ろに引ければ、けっこう簡単にできるようになります。
ですから背中から肩甲骨のあたりを、軽くつついて刺激して、それを後ろに引くように仕向ければ、お子さんは簡単に仰向けに戻れます。
仰向けに戻れたら、その度に大げさにほめてあげましょう。
そうすることで、お子さんは自力で仰向けに戻れることに、自信を深めていきます。
⑶ うつ伏せの寝返りから戻る練習
横向きから、確実に仰向けに戻れるようになったら、次は徐々にその角度を、うつ伏せに近づけていきます。
少しづつ分からない程度に、しかし確実に試練を与えて、追い詰めていきます。
嘘です。
無理をしないように、ゆっくりと進めてくださいね。
ここまでくれば、お子さんも、どのくらいうつ伏せになれば、自力で寝返るのが難しくなるか、だいたい勘で分かる様になります。
ですからあまり無理にやらせると、怖がって、これまでの努力が台無しになりますので、ここで焦らない様にしてくださいね。
⑷ 自分からうつ伏せになる練習
うつ伏せから戻る練習と合わせて、自分からうつ伏せになる練習も行います。
これは肩や腰の回転を、少しだけ助けてあげることで、自分からうつ伏せになる様に、促していきます。
お子さんは、自分がどのくらいまでなら、安全にうつ伏せになれるかを、もうだいたい把握しています。
ですからそのレベルに合わせる様に、焦らずに、なるべく自分から動くのを待って、その動作を補助する形で、練習を進めてください。
あくまでも焦らずに、お子さんができそうなレベルを、繰り返し練習しながら、少しづつうつ伏せの角度を増やしていきます。
それは肩や腰の回転を介助する手の力を、お子さんに気づかれない程度に、少しづつ強くしていきます。
あくまでも相手に気づかれない様に、姑息に卑怯にいやらしく行ってくださいね。
まとめ
脳性麻痺のお子さんが、うつ伏せを怖がるのは、⑴ 背骨がこわばって体が柔らかく回転しない ⑵ 自力でうつ伏せから戻れない などが原因で怖がっています。
対策としては、背骨の筋肉を柔らかくほぐして、肩や腰がしなって、自分のタイミングで寝返りできる様にしていきます。
また寝返りの練習ではなく、うつ伏せから戻る練習から始めることで、うつ伏せの恐怖を克服して行く様に促します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
注意事項!
このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上、自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。