脳卒中片麻痺の関節拘縮と骨格筋のコンディション障害のリハビリ
はじめに
今回は脳卒中片麻痺の関節拘縮と骨格筋のコンディション障害に対するリハビリについてご説明いたします。
麻痺と筋肉の強張りは違います!
皆さんは麻痺側の手足が動かない事を「麻痺だから仕方がない」と思い込んでいませんか?
しかし以前にもお話ししましたが、脳卒中片麻痺で手足が動かせない状態は、運動神経の麻痺によるものだけでなく、関節拘縮や手足を動かす骨格筋のコンディションの障害によるところも多いのです。
特に手足を動かす骨格筋のコンディションに関しては、脳卒中の麻痺自体が痙性麻痺と言って、筋が強張る麻痺ですから、「骨格筋のコンディション障害による筋の強張り」と「痙性麻痺による筋の強張り」の区別が難しく、手足の筋肉が硬く強張っていれば「麻痺だから仕方がない」と諦めてしまいがちです。
しかし大脳の運動神経からの異常な信号で筋肉が強張っているのと、長い間浮腫んだまま動かさないでいた事による、筋肉の強張りは全く違います。
そして急性期の疾患が重い状態で身体にかかる負担の大きさと、その後に残る影響は皆さんが想像する以上に残っています。
また筋肉自体のコンディションが悪くて強張った状態で、いくらリラクセーションや促通手技などを受けても、大脳の運動野にその情報が正しく伝わりませんから、麻痺を改善するための貴重なリハビリ自体も非効率で無駄なものになってしまします。
ですからより良い脳卒中リハビリを行うための、言わば下ごしらえ的な要素としても、関節拘縮と骨格筋コンディション障害のケアは重要な意味を持っています。
今回は関節拘縮と筋肉のコンディション障害の成り立ちとケアの方法についての基本をご説明します。
① 関節拘縮の成り立ちとリハビリ
人の関節は動かさないでいると固まって動かなくなってしまいます。
脳卒中片麻痺の急性期の場合は、さらに筋肉が強張ったり、手足が浮腫んだりと関節拘縮が起こりやすい状況がプラスされます。
特に浮腫に関しては、ひどい場合は手がグローブの様に膨らんだり、足がものすごく太くなったりする場合があります。
この様なケースでは手の指や足の指や膝などが関節拘縮で動かせなくなります。
特に注意したいのは手の指に浮腫による強い関節拘縮が起きている場合、指の運動麻痺はさほどでもないのに、急性期の浮腫が酷かったせいで指の関節が拘縮して動かせなくなっている場合があります。
この時にはご自分で指を屈伸すると途中までは普通に動かせますが、その先はコツンと何かに当たった様に動かせなくなります。
この様な場合は、丁寧に関節を動かしてほぐしてやる事で、案外うまく指が動かせるようになる場合があります。
手の指の拘縮と同様に、膝や肘あるい肩の関節などにも麻痺は軽いにもかかわらず、関節拘縮によって動きが悪くなっている場合が結構あります。
この場合も、丁寧に関節を動かしてほぐしてやる事で、結構動きが出る様になる場合があります。
しかし関節が動かせなくなる原因としては、関節拘縮だけでなく、その関節を動かしている筋肉が強張っている場合も関節がうまく動かせなくなり手足の運動が妨げられてしまいます。
次は「手足の筋肉のコンディション障害による筋の強張り」についてのご説明をいたします。
② 手足の筋肉のコンディション障害による筋の強張りの成り立ちとリハビリ
脳卒中片麻痺は痙性麻痺といって、筋肉が強張って動かなくなる麻痺ですが、この筋肉の強張りには、痙性麻痺による強張りの他に、筋肉のコンディションが悪くなって起きる強張りが潜んでいるのです。
麻痺のない普通の状態でも、肩が凝ったりして筋肉が強張る経験は皆さんがお持ちの事と思います。
痙性麻痺は神経からの信号による強張りですが、筋肉の浮腫や長期間動かさなかったことによる強張りは、筋肉自体の問題でマッサージなどで改善できる可能性が高いものです。
ですから「この筋肉の強張りは痙性麻痺で強張っているからもう治らない」と諦めないで根気良くマッサージなどのアプローチを行う必要があります。
脳卒中片麻痺で筋肉のコンディションが悪くなってしまう原因は、大きく分けて次の3点が挙げられます
-
急性期の浮腫によって筋肉のコンディションが悪くなってしまう
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痙性麻痺によって常に筋肉が緊張していることで、さらに筋肉が凝ってしまう
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昏睡や安静などで長期間筋肉を動かさなかったことで、筋肉が強張ってしまう
簡単に表現するとこんな感じでしょうか。
急性期の浮腫は関節拘縮だけでなく、筋肉のコンディションにも影響を与えます。
長い間浮腫んで動かせなかった筋肉は強張って萎縮して、場合によっては長さが短くなって関節が十分に伸ばせなくなったりします。
これらの筋肉を少しずつほぐしていくことで、筋肉の動きが出てくる場合があります。
また痙性麻痺によって筋肉は常に緊張した状態になります。
この筋肉を緊張させる信号は大脳の運動神経から出ていますが、筋肉自体も長時間の緊張を続けることで、今度は筋繊維自体が強張ってきてしまいます。
そうして筋肉が強張り出すと、強張りが強張りを呼ぶ悪循環に陥ってしまいます。
特にこの悪循環は早めに断ち切っておかないと、後々のリハビリの足を引っ張る原因となります。
この筋肉の強張りは一見して、痙性麻痺との区別は難しいのですが、丁寧にマッサージを行っていくことで、筋肉が少しずつほぐれてきます。
もしマッサージで筋肉がほぐれてきたらそれは痙性麻痺だけでなく、筋肉のコンディション障害による強張りが良くなってきているのです。
まとめ
脳卒中のリハビリテーションの基本中の基本としては、この関節拘縮と筋肉の強張りの解消が、まず初めの取り組むべき課題となります。
リハビリのアプローチ方法としては、関節可動域訓練、関節モビライゼーション、マッサージ、マイオセラピー、ストレッチなどを組み合わせて行います。
また日頃の生活なのかでの運動方法や座る姿勢などにも注意する必要があります。
今回は関節拘縮と骨格筋のコンディション障害による筋肉の強張りについて、基本的な考え方をご説明しました。
具体的なそれぞれの関節のほぐし方や、筋肉のマッサージ方法については、後々ご説明いたします。
次回は
「脳卒中後の自律神経機能の異常による筋緊張の高まりとそのリハビリ」
についてご説明いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました
注意事項
※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。
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