筋萎縮性側索硬化症(ALS)の筋肉はなぜ異常に強張るのか(仮説)!
はじめに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄の前角細胞から中枢の神経に向けて、運動神経細胞が障害されて四肢の麻痺が起きる病気です。
しかしこのALSによって起きる筋肉の麻痺は、ただ単に麻痺が起きて力が出せなくなるだけでなく、強い痛みを伴う場合があるのです。
そしてこの筋肉の痛みはさらに強い強張りを伴い、強い首や肩の痛みや腰の痛みとなります。
また呼吸を補助する呼吸補助筋にこの痛みと強張りが起きた場合は、呼吸の苦しさを強く感じる場合もあります。
また筋肉の痛みと強張りが自律神経に悪影響を及ぼすことで、手足の強い浮腫が起きてしまい辛い思いをする方もおられます。
今回はこの筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺の進行に伴い起きる異常な筋肉の痛みと強張りについて、その原因とリハビリ方法について解説したいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺に伴う筋肉の痛み
筋萎縮性側索硬化症(ALS)による麻痺が進行してくると、それに伴い筋肉の痛みと強張りを訴える方が結構たくさんおられます。
痛みの起きる場所は、首や肩の周辺であったり、背中であったり、腰であったり、足であったり、その方によって違います。
しかしかなり高い率で筋萎縮性側索硬化症(ALS)には、この筋肉の強張りと痛みが出現します。
そしてこの筋肉の強張りと痛みの影響によって、手足に浮腫が出現する場合があります。
これは痛みの出る筋肉の多くが「コアマッスル」と呼ばれる、小さいけれども関節の安定と感覚制御に関わる重要な筋肉が障害されることが多いただと思われます。
このコアマッスルは感覚筋と呼ばれ、感覚センサーの役割も果たしており、自律神経系と強い連携があるようなのです。
ですのでこのコアマッスルが障害されると、自律神経系が混乱して抹消の循環がおかしくなるために、手足が浮腫んでしまうのだと考えられます。
ではこの筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺に伴う筋肉の痛みと強張りはどうして起こるのでしょうか?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺に伴う筋肉の痛みはどうして起きるのか?
ではなぜこの「小さいけれども関節の安定と感覚制御に関わる重要な筋肉」である「コアマッスル」がALSの麻痺によって障害されてしまうのでしょう?
実はALSの麻痺に関しては、無理な筋力トレーニングで麻痺が悪化する可能性があるため、無理な筋力トレーニングをしてはいけないという説もあるのです。
しかし単に脊髄の前角細胞にある運動神経が障害されて麻痺になるのであれば、筋力トレーニングが麻痺の悪化につながる理由がわかりません。
しかしつい最近も在宅でALSの患者さんに訪問リハビリを行っていた作業療法士が、無理な筋力トレーニングを行ったことで、ALSの麻痺を悪化させたとして裁判で訴えられているのです。
ここで筆者の推論を申し上げたいと思います。
一般的な末梢神経麻痺による筋力低下の場合は、ひとつの筋肉(ひとつの筋膜に包まれた筋肉の単位)ごとに、その筋肉の筋線維が全体的に活動できなくなります。
しかし筋萎縮性側索硬化症(ALS)の場合には、脊髄の前角細胞の運動神経が少しずつ障害されていきますから、ひとつの筋肉の単位ではなく、その筋膜に包まれた筋肉の線維のひとつひとつがバラバラに障害されることが考えられます。
するとひとつの筋膜に包まれた筋肉の隣り合わせた筋線維のひとつが麻痺して動かなくなって強張っており、その隣の線維は動いているという様な状態になりますね。
そうなると麻痺して動かない線維はドンドン硬くなり、その隣の動いている筋線維は隣の線維が硬く動かないために、大変な負担がかかるという状態になります。
こうして筋萎縮性側索硬化症(ALS)の筋肉は、異常に強張り痛みを伴う様になるのではないかと考えられるのです。
こうしてただでさえ麻痺によって筋力が弱まっているのに、その筋肉に対して運動によって過剰な負担がかかって、さらに筋肉のコンディションが悪化してしまう仕組みが作られてしまっている様なのです。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺に伴う筋肉の痛みはどうケアすれば良いの?
私の臨床の経験上、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺の進行に伴い出現する、筋肉の強張りと痛みは、マイオセラピー(深部筋マッサージ)などのマッサージを丁寧に行うことで、ほとんど改善します。
嘘の様な話ですが、身体中が痛くて強張って、手足が浮腫んでしまっている様なケースでも、キチンとマッサージを継続すれば、1ヶ月から2ヶ月程度で症状は嘘の様に改善します。
またこの筋肉が強張って痛みがある状態で、筋力トレーニングを行えば、当然筋肉のコンディションが悪くなって、状態が悪化します。
しかしキチンとしたマッサージを行いながら、筋力トレーニングを行う場合には、比較的にトラブルは少なく、安心してトレーニングを行うことができます。
しかし筋萎縮性側索硬化症(ALS)の場合、筋力トレーニングをしても筋力が回復するわけではありません。
あくまでも現状維持か、気休め程度に考えて筋力トレーニングを行っていただければと思います。
それよりも辛い首や肩や背中や腰の痛みが軽くなって、安楽に生活できることが、一番重要なことだと考えています。
とにかくただでさえ厳しい進行性の難病ですから、余計な苦しみはできるだけ少ない方が望ましいと思います。
まとめ
今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の麻痺の進行に伴う筋肉の強張りと痛みについて、その原因とケアの方法について解説を行いました。
注意事項!
このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。