はじめに
今回は前回「脳卒中片麻痺の上肢の全体的な運動ファシリテーション2」に引き続き、麻痺上肢の全体的な運動をスムースに行う動作を獲得するためのファシリテーションテクニック(促通手技)による自主トレ方法を解説していきますが、今回は立位での運動方法をご説明します。
立位での上肢ファシリテーション
立位でファシリテーション(促通手技)のための手(上肢)の運動を行う場合、座位の場合と何が違ってくるのかと言うと、座位は椅子に座っていますが、立位では自分の足で立っているため、自分の足で立っている状態でもバランスが安定している必要があります。
座位の場合は骨盤から背骨と肩の連携でバランスをとり、左右の足(下肢)はその土台の骨盤を支えるためのアンカーの働きをしています。
しかし立位になると、下肢自体が土台の働きをしており、左右の足と骨盤と肩の連携でバランスをとる必要が有り、より難易度の高いバランス反応となります。
この時に土台を安定させるために重要な働きをするのは、足のつま先と踵への体重の移動を素早く上手に行えるようになっている必要があります。
だいたいお年寄りや麻痺のある方は、立っている時の体重を踵にかける傾向がありますが、その状態では尻餅をつくように転びやすく、また膝や腰に痛みが出やすい不安定な立ち方になってしまいます。
ですから立位練習で足のつま先にだいたい7割、踵に3割くらいの配分で立てるようになっておく必要があります。
立位でリラックスして手(上肢)を動かすためには、手を動かしたことによる重心の揺れを、足の爪先と踵の重心移動を上手に行ってバランスが取れるようになっていることが必要になるのです。
立位での上肢の運動が上手に安定して出来るようになれば、普段の生活でも歩行が安定したり、手を使って出来ることが増えたり、たとえ麻痺側の指の動きが不十分でも、健側の手の動きがより上手に行えるようになりますから、生活動作のやりやすさは格段に向上するはずです。 頑張って焦らずに徐々にステップアップしていきましょう。
立位で行う脳卒中片麻痺の上肢の全体的な運動ファシリテーション
リスク
小脳性失調のある方は行えません
必要機材
手すりのそばで行ってください
運動時間
15分 ~ 20分
運動内容
※ 今回の運動は右片麻痺の設定で解説します!
肘の屈伸運動
① 健側に手すりが来るように、手すりのそばに立ちバランスを崩した時にいつでも手すりにつかまれるようにしておきます。 両足の踵より爪先にやや多めに体重をかけるようにして、背筋をのばして立ちます。
(手すりのそばに立った開始姿勢)
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして(健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします)両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
(健側と麻痺側の手の組み合わせ方)
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
(胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢)
(ゆっくりと両肘を完全に伸ばしていきます)
④ 完全に肘を伸ばしたら(ご自分で可能な範囲の限界まで)、今度は再びゆっくりと肘を曲げていき、胸の前に組んだ手を戻します。
(ゆっくりと肘を曲げ両手を胸の前に引きつけます)
⑤ この動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸運動
① 健側に手すりが来るように、手すりのそばに立ちバランスを崩した時にいつでも手すりにつかまれるようにしておきます。 両足の踵より爪先にやや多めに体重をかけるようにして、背筋をのばして立ちます。
(手すりのそばに立った開始姿勢)
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして(健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします)両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
(健側と麻痺側の手の組み合わせ方)
③ 組んだ両手を胸の高さに持ってきて、肘を曲げた状態から膝の上でゆっくり肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
(胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢)
(ゆっくりと両肘を完全に伸ばしていきます)
④ 完全に肘を伸ばしたら(ご自分で可能な範囲の限界まで)、そのまま両腕を頭の上までゆっくりと挙げていきます。 このとき麻痺側の肘を曲げないように注意してください。
(両肘を伸ばした後に両腕を頭の上に向かって上げていきます。 ご自分で可能な範囲の限界まで両腕を頭の上に向かって上げます)
⑤ 完全に両腕の頭の上に挙げてきたら(ご自分で可能な範囲の限界まで)、今度は再びゆっくりと両腕を下げてきて、組んだ手が腰の上に来るまで下ろしてきます。 このとき麻痺側の肘が曲がらないように注意してください。
(肘を伸ばしたまま腰の高さまで両手を降ろしてきます)
⑥ この動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸と外転と回旋を組み合わせた運動1
① 健側に手すりが来るように、手すりのそばに立ちバランスを崩した時にいつでも手すりにつかまれるようにしておきます。 両足の踵より爪先にやや多めに体重をかけるようにして、背筋をのばして立ちます。
(手すりのそばに立った開始姿勢)
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして(健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします)両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
(健側と麻痺側の手の組み合わせ方)
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
( 胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢)
(ゆっくりと両肘を完全に伸ばしていきます)
④ そこから健側の手で麻痺側の手を麻痺側の腰の脇に引き付けるようにします。健痺側の肘を曲げながら、健側の手首もできるだけ手のひら側に曲げるようにします。
(麻痺側の腰に向けて、ゆっくりと両手を降ろしていきます)
(健側の手で麻痺側の手を麻痺側の腰の脇にゆっくりと引きつけていきます) ※ 今回は右片麻痺の設定になります。
⑤ そこから健側の手で麻痺側の手を支えながら、両手を胸の上に持ってきながら、さらに健側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき麻痺側の肘を曲げないように注意してください。
(両手を胸の前を超えて健側の肩の上に向けて挙げていきます)
⑥ さらに健側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき麻痺側の肘を曲げないように注意してください。
(健側の斜め上に向けて完全に両腕を挙げていきます)
⑦ ついで胸の前を超えて麻痺側の腰に向けて両手を降ろしていきます。
(両手を胸の前に戻し)
(さらに麻痺側の腰の脇の位置に戻します)
⑧ この麻痺側の腰と健側の肩の上に向けて交互に上げ下げする動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸と外転と回旋を組み合わせた運動2
① 健側に手すりが来るように、手すりのそばに立ちバランスを崩した時にいつでも手すりにつかまれるようにしておきます。 両足の踵より爪先にやや多めに体重をかけるようにして、背筋をのばして立ちます。
(手すりのそばに立った開始姿勢)
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして(健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします)両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
(健側と麻痺側の手の組み合わせ方)
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
( 胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢)
(ゆっくりと両肘を完全に伸ばしていきます)
④ そこから健側の手で麻痺側の手を健側の腰の脇に引き付けるようにします。麻痺側の肘を曲げながら、麻痺側の手首もできるだけ手のひら側に曲げるようにします。
(健側の腰に向けて、ゆっくりと両手を降ろしていきます)
(健側の手で麻痺側の手を健側の腰の脇にゆっくりと引きつけていきます) ※ 今回は右片麻痺の設定になります。
⑤ そこから健側の手で麻痺側の手を支えながら、両手を胸の上に持ってきながら、さらに麻痺側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき健側の肘を曲げないように注意してください。
(両手を胸の前を超えて麻痺側の肩の上に向けて挙げていきます)
⑥ さらに麻痺側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき健側の肘を曲げないように注意してください。
(麻痺側の斜め上に向けて完全に両腕を挙げていきます)
⑦ ついで胸の前を超えて健側の腰に向けて両手を降ろしていきます。
(両手を胸の前に戻し)
(さらに健側の腰の脇の位置に戻します)
⑧ この健側の腰と麻痺側の肩の上に向けて交互に上げ下げする動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
※ 上記の動作は、あくまで麻痺側をリラックスして動かしながら、健側の手で麻痺側が力みすぎないようにサポートして、なるべくスムースにゆっくりと動かすように気をつけながら運動してください!
次回は
「脳卒中片麻痺の麻痺側肩の運動を安定させるファシリテーション」
についてご説明します。
最後までお読みいただきありがとうございます
注意事項!
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました!
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
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あとは皆さんの継続力だけですね。
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